「ドッグランで遊ばせたとき、ウチの柴犬は呼んでも戻って来ない」という相談を受け、私は『ムート』に会いに行きました。
飼い主さんがムートの前に飼っていたのは、『オリバー』というゴールデンレトリーバーのオスで、この子がとてもおりこうだったそうです。この場合の「おりこう」とは、人が困る行動をしない、ということでしょうか。それが本当におりこうかどうかここではふれないことにしますが、じつはこのパターン、とても多いのです。
「前に飼っていた犬はしつけをしなくてもおりこうだっだのに、今度の犬はいたずらばかりして、犬が悪いのか自分が悪いのか飼い主さんが悩んでしまう」というケースです。なかには「この子は頭がおかしいんじゃないか?」と心配する飼い主さんもいらっしゃいます悪いい子と言われて、飼い主さんの指示に従わず、スキを狙っていたずらばかりする犬というのは、実際はとても賢くて作業意欲の高い犬だったりします。つまり、優秀な犬ということです。
何もしなくてもいい子に育ったというのは、たまたま生まれつき性質が良かったのかもしれません。
「最初の犬がいい子に育ったので、次もうまくいくと思ったんですが、とんでもなくて自信を失いました。もう、とにかく助けてください!」。こういったケースこそ、たくさんの問題犬と出会い、改善のお手伝いをしてきたプロがお役に立てるのです。
柴犬は、とても明るくて、お茶目、天真爛漫。元気で、たまに制御不能になることも(?)ある、そんな犬だと感じています。
その気質はこう説明できます。「家庭犬としては感情がこまやかで、警戒を怠らず、高い知性を持つ。また陽気で愛情に富み、人に慣れやすい。年を取っても若々しく上機嫌な雰囲気を失わず、また仕事への能力も失わない」。「年を取ってもも若々しく」=「年を取っても落ち着かない」、「仕事への能力も失わない」=「いたずらという作業に関しては天下一品」とも読めるのは、私だけでしょうか?
ムートは悪い子ではないとしても、実際に飼い主さんは困っている。それを助けるのが私の仕事ですので、そんな愛すべき「やんちゃ君」をコントロールできるようになるために、飼い主さんには正しい関係を作るためのベースプログラムを実施していただきました。ドッグランで指示に従ってもらうには、まず家の中で指示に従ってくれる関係を作っておかなくてはいけません。とにかく、家の中でムダにムートを呼ばないように注意してもらいました。
大した用事がないときは、呼んではいけません。と言うよりも、よほど(ムートにとって)良いことをしてやらない限りは呼ばないようお願いしました。
3週間ほど実施していただき、だいぶ言うことを聞くようになったということで、次の具体的なトレーニングをアドバイスしました。
まずはムードをドッグランに放し、しばらく自由に遊ばせます。落ち着いてきたら、飼い主さんにおやつを持ってしゃがんでもらいます。立っていた飼い主さんがしゃがむと、犬は気になります。ムードが気付いて戻って来たら、おやつを与えます。このとき、できるだけ犬をさわらないようにしてください。「おりこうだね~」などと声をかけるのはOKです。
おやつはとっておきのものを使ってください。ふだん家では与えないような、おいしいものにしましょう。チーズやレバーを好きな犬は多いですよね。犬は甘味を感じることもできるので、さつまいもやりんご、いちごなどのフルーツ、手作りケーキなども人気があります。愛犬の好物を見つけてあげるのは楽しいことです。
この後のムートのトレーニングに様子はまた次回に書きたいと思います。
では。