「オイデ」のしつけ

2017年11月24日

以前話したドッグランで呼んでも戻ってこない「ムート」の行動に変化があったようです。

しつけの時におやつを使うように勧めると「うちの子はおやつが好きじゃないんです」という飼い主さんも多いですが、そういう方は、市販のワンコ用ビスケットやジャーキーに興味を示さないだけで、そう判断してしまうことがあるようです。

愛犬が好きなものは、がんばっで探してあげてください。また「うちの子は何でも好きです」という方も多いですが、本当にそうでしょうか?

これよりあっちが好き、などの好みは必ずありますので、ぜひわかっていてあげてほしいです。好きなものを見れば、犬の表情は変わるものです。

わが家では、鶏のささみやレバーをゆでたり、さつまいもをふかしたりしています。場合によっては、生肉を与えるなんてこともアリだと思います。

最近では、ワンコ用の手作りアップルパイやマフィン、マドレーヌなどでも犬の気を引けることがわかりました。

さて、「ドッグラン」で「オイデ」のしつけをするときは、おやつを少しだけ与えたら立ち上がります。「またドッグランで遊んできていいよ」という気持ちで解放してあげてください。

しばらくしたら、またしゃがみます。犬が気付いて戻って来たら、おやつを与えます。これを10回くらい繰り返します。

次に、今度はしゃがんでから犬の名前を呼びます。犬が気付くまで呼んでください。戻って来たらおやつを与えます。これも10回くらい繰り返します。

名前を一度呼んだだけで振り向き、しゃがんでいる飼い主さんの姿を見つけて戻って来るようになったら、確実に戻って来る様子を確認してから「オイデ」と1回指示を出すようにします。1回の指示で戻って来てほしければ、指示を出すのは1回だけにしましょう。

整理しますと、愛犬を呼ぶ→飼い主さんを見る→戻ろうとする気持ちが生まれる→こちらに向かって走り出す→戻って来るのを確認してひと言「オイデ」と言う→愛犬が戻って来る→おやつを与える、という流れです。

もし途中で戻って来なかったら、その日の「オイデ」トレーニングは中止します。それ以上は呼ばないでください。そっぽを向いて知らんぷりしましょう。犬が戻ってきても、アイコンタクトしないようにしてください。

トレーニングを中止して帰る場合は、「立ったまま」犬が自ら戻って来るのを待ち、おやつは使わずに言葉でよくほめて、リードを着けます。

リードを着けたらおやつを与えます。このおやつは、「オイデ」で使うものとは別のもの(ランクが下のもの)にしてください。食べてくれるならビスケット程度で良いと思います。

その後、ドッグランを一緒に2~3周ほど楽しそうに走ってあげてください。それから一度「オスワリ」をさせて「帰ろうね」と指示を出し、おやつ(ビスケット程度のもの)を与えて帰るようにしてください。

このトレーニングを始めて1週間もしないうちに、ムートの行動が変化してきました。

ドッグランでは、呼び戻しができている犬が少ないことに驚きます。私は、呼び戻せない犬を放すことには不安を感じます。ムートが遊ぶドッグランでも、呼び戻しができる犬はほとんどいないということでした。そんななかで呼び戻しができるようになったムートはいつの間にか「名犬」と呼ばれ、飼い主さんもうれしそうです。

「オイデ」のしつけだけではなく、犬のしつけから体調管理まで色んなことが載っているサイトがあるので、そこに載っているしつけ方も参考になりますよ。 柴犬 しつけ

今では、ドッグランで「ムート、おいで!」と声をかけると、たくさんの『ムート』が戻ってくるそうです(笑)。

 

やっぱり甘噛みが好き!

2017年9月23日

ウチの犬の中の一匹、アトラスは4歳になる今でも甘噛みが大好きです。私とのコミュニケーションにおいて、甘噛みは大事なものとなっています。もちろん、加減ができる甘噛みです。

子犬たちの母親であるフーラも、やはり子犬のころ甘噛みが大好きでした。ほかのオス3頭が子犬のころよりもすごかったので、驚くほどでした。フーラの場合には、私は叱らずにとことん甘噛みから逃げていました。ぬいぐるみを大小混ぜて3つ、ボールを3つ用意して、フーラが暇にならないように、噛まれないようにうまく逃げながら、一生懸命遊びました。

おもちゃを使って遊んでいるのに手を噛んでくるのは、おもちゃの
動きがつまらないからです。子犬は「その遊びはつまんないから、甘噛みごっこをしようよ!」と誘ってくるのです。子犬を楽しませることができるよう、がんばって遊んであげましょう。

甘噛みは、子犬の問題行動の代表格になっているようですが、どんなに甘噛みで困っている飼い主さんでも、おやつを使ったトレーニングを始めると、ほぼ100%甘噛みされません。子犬は「どうしたらおやつを食べられるだろう?」と必死で頭を使っているので、甘噛みする暇がないのです。甘噛みより楽しいことがあれば、甘噛みはしないのです。

14年前に『ロック』とコタロ-を飼い始めたころ、「甘噛みはいけない」という考え方がしつけの常識でしたので、させませんでした。なのでこの2頭は甘噛みをしなくなったのですが、ロックが8歳のとき、彼の「犬生」で1度だけ甘噛みをしたことがありました。それは、珍しくハウスから出して留守番をさせ、帰ったときのことでした。ロックは喜びを全身で表し、うれしそうに甘噛みしたのです。犬は最高にうれしいときも甘噛みをするのだと感じました。

アトラスが私の手を甘噛みしているときの様子を見ていて、なんだか気持ち良さそうだなあと思っていたのですが、ちょうどそのころ読んでいた畑正憲さんの著書『ムツゴロウの動物交際術』に、動物の愛撫の仕方、愛撫の受け方が書いてありました。大変共感しましたので、引用させていただきます。

「しかし、動物のコミュニケーションは、もうすこしワイルドであり、前歯で噛んだりする鋭角的な接触が含まれている。中途半端ではなく、だから思いきって強く愛撫した方がいいことが多い」

動物との間に信頼関係が出来上がったら、動物は親愛の情を込めて前歯や牙を使うことがあるということですね。そして、それを受けてやったり返してやれたら、もっと親しくなれるんだろうなと感じています。だから犬に噛みつけ、ということではありませんが。

かのイアン・ダンバー博士(獣医師、動物行動学者)も「甘噛みをさせないと、いざ本当に噛んだときにどのくらいのダメージを相手に与えるか予測できないので、まったくやめさせるのではなく、加減を教えることが大事だ」と言っています。

甘噛みはいけないと言われていたころは、「やめさせないと本気噛みにつながってしまう」という考え方がありました。私はこれにも疑問を感じていました。わが家の犬たちと付き合ってきて、甘噛みと本気噛みがつながっているとは思えなかったからです。

そして、その考え方を裏付けてくれたのが、テンプル・グランディン氏(動物科学博士)の著書『動物感覚Iアニマルーマインドを読み解く』です。

グランディン博士によると、攻撃を司る脳の回路は、遊びを司る脳の回路とは別にあるそうです。時には大はしゃぎが本物のケンカになることもありますが、脳の中では「荒っぽい遊びと本物の攻撃はまったく別物」ということでした。甘噛みは本気噛みにつながらない、ということではないでしょうか。

というわけで、私は、甘噛みをやめさせるより加減を覚えさせたほうがいいと考えていますが、残念ながら、それはすべての犬に当てはまることではありません。犬種や性質によっては、大けがをする事故につながることがありますので、自分の愛犬に不安がある方は、ぜひプロのドックトレーナーに相談してください。

 

悪い犬は名犬

2017年8月27日

「ドッグランで遊ばせたとき、ウチの柴犬は呼んでも戻って来ない」という相談を受け、私は『ムート』に会いに行きました。

飼い主さんがムートの前に飼っていたのは、『オリバー』というゴールデンレトリーバーのオスで、この子がとてもおりこうだったそうです。この場合の「おりこう」とは、人が困る行動をしない、ということでしょうか。それが本当におりこうかどうかここではふれないことにしますが、じつはこのパターン、とても多いのです。

「前に飼っていた犬はしつけをしなくてもおりこうだっだのに、今度の犬はいたずらばかりして、犬が悪いのか自分が悪いのか飼い主さんが悩んでしまう」というケースです。なかには「この子は頭がおかしいんじゃないか?」と心配する飼い主さんもいらっしゃいます悪いい子と言われて、飼い主さんの指示に従わず、スキを狙っていたずらばかりする犬というのは、実際はとても賢くて作業意欲の高い犬だったりします。つまり、優秀な犬ということです。

何もしなくてもいい子に育ったというのは、たまたま生まれつき性質が良かったのかもしれません。

「最初の犬がいい子に育ったので、次もうまくいくと思ったんですが、とんでもなくて自信を失いました。もう、とにかく助けてください!」。こういったケースこそ、たくさんの問題犬と出会い、改善のお手伝いをしてきたプロがお役に立てるのです。

柴犬は、とても明るくて、お茶目、天真爛漫。元気で、たまに制御不能になることも(?)ある、そんな犬だと感じています。

その気質はこう説明できます。「家庭犬としては感情がこまやかで、警戒を怠らず、高い知性を持つ。また陽気で愛情に富み、人に慣れやすい。年を取っても若々しく上機嫌な雰囲気を失わず、また仕事への能力も失わない」。「年を取ってもも若々しく」=「年を取っても落ち着かない」、「仕事への能力も失わない」=「いたずらという作業に関しては天下一品」とも読めるのは、私だけでしょうか?

ムートは悪い子ではないとしても、実際に飼い主さんは困っている。それを助けるのが私の仕事ですので、そんな愛すべき「やんちゃ君」をコントロールできるようになるために、飼い主さんには正しい関係を作るためのベースプログラムを実施していただきました。ドッグランで指示に従ってもらうには、まず家の中で指示に従ってくれる関係を作っておかなくてはいけません。とにかく、家の中でムダにムートを呼ばないように注意してもらいました。

大した用事がないときは、呼んではいけません。と言うよりも、よほど(ムートにとって)良いことをしてやらない限りは呼ばないようお願いしました。

3週間ほど実施していただき、だいぶ言うことを聞くようになったということで、次の具体的なトレーニングをアドバイスしました。

まずはムードをドッグランに放し、しばらく自由に遊ばせます。落ち着いてきたら、飼い主さんにおやつを持ってしゃがんでもらいます。立っていた飼い主さんがしゃがむと、犬は気になります。ムードが気付いて戻って来たら、おやつを与えます。このとき、できるだけ犬をさわらないようにしてください。「おりこうだね~」などと声をかけるのはOKです。

おやつはとっておきのものを使ってください。ふだん家では与えないような、おいしいものにしましょう。チーズやレバーを好きな犬は多いですよね。犬は甘味を感じることもできるので、さつまいもやりんご、いちごなどのフルーツ、手作りケーキなども人気があります。愛犬の好物を見つけてあげるのは楽しいことです。

この後のムートのトレーニングに様子はまた次回に書きたいと思います。

では。

 

甘噛みって、いけないこと?

2017年7月30日

犬の甘噛みって、いけないことでしょうか? 書店に並ぶ犬のしつけ本にはもちろん、インターネット上にある情報にも「甘噛みはダメ」と書いてあることが多いようです。しかし私は、甘噛みは悪いことではないと思っています。

母犬の子犬育てを見ておく必要性を感じ、プロのブリーダーの指導のもと。2007年に自宅で愛犬『フーラ』(柴犬)に子犬を産ませました。フーラの出産や子育てを見ることで、本当に多くのことを学びました。

甘噛みに関しては、生後27日目に初めて子犬同士がやり合うところを観察しました。『犬の行動学入門』によると、ゴールデン・レトリーバーで18日齢から始まっているようです。

それからずっと、子犬たちの大好きな遊びは「甘噛みプロレスごっこ」でした。相手の顔、耳、足、しっぽなどを噛み、噛まれた犬は噛み返したり、痛かったら「キャア」と鳴いて抗議したり、とてもにぎやかでした。

生後37日目に、子犬が初めて私の指に噛みつきました。噛みついたと言っても、まだ歯ぐきから2ミリくらいしか歯が出ていませんので痛くありません。ということは、生後30日くらいで繁殖元からペットショップに連れて来られ、ガラスのショーケースに入れられてしまった子犬は、牙を使った甘噛み遊びを体験することができません。必然的に、甘噛みの加減を覚えられないということにもなります。

その後、子犬同士の甘噛みごっこは、どんどん激しくなっていきました。幸いわが家には、オスの、柴犬、当時9歳の『コタロー』と6歳の『アクセル』と、母犬である3歳の『フーラ』がいて、主に6歳のアクセルが子犬たちのしつけを担当してくれました。

フーラがしつけをしようと子犬たちの中に入ると、お乳を吸いたくて子犬たちが一斉にお腹の下に入って乳首に噛みつくので、フーラはしつけをするどころではなさそうでした。

たまに強く噛まれると「ギャウッー」と叱っていましたが、しつけらしいしつけをしたのはアクセルでした。オスが子犬のしつけをするのはよくあることだそうですが、とても興味深い行動を観察することができました。

子犬たちの甘噛みごっこが激しくなると、アクセルがうなりながら仲裁に入り、興奮しすぎている子犬をくわえて押さえつけたり、鼻先でひっくり返したりします。すると、子犬は驚いて「キャン」と鳴いてひっくり返るものの、すぐに起き上がってアクセルのところへ行き、また叱られたりしていました。

子犬たちはそうやって叱られながら、興奮しすぎてはいけないことや、強く噛みすぎてはいけないことを覚えるのです。加減をしっかりと覚えたとき、お互いに噛みつき合い、ひっくり返し合うという行動は、子犬たちにとって最高の遊びになります。そんなに大好きな遊びを、人とやってはいけないことにしてしまうのは、犬と仲良くなりきれないような気がして、もったいないと思ってしまうのです。

ですからわが家の子犬たちには、甘噛みをどんどんさせました。噛まれて痛かったら、大きめの高い声で「痛いっ!」と叫び、続いて低い声で「痛いなあ」と言いながら顔を近づけると、子犬は自らお腹を出してひっくり返りました。アクセルのしつけのおかげです。反省した様子を見せたらまた噛ませて、痛くしなかったらよくほめて、遊び続けてあげるのです。そのうちだんだん興奮してきて、また強く噛むこともありますが、そうしたらまた「痛いっ!」と言ってやめさせます。この繰り返しで、甘噛みの加減を教えていきました。叱るのではなく、教えるのです。

 

吠えなくなった親友犬

2017年6月14日

『ディディエ』は私の友人の柴犬です。友人と一緒にブリーダーのところへ行き、子犬の気質を見る役を仰せつかりましたので、本当に小さなころから知っている幼なじみ犬で、犬の親友でした。

ディディエはテンションが上がりやすく、からかうのが楽しくて興奮させすぎたりしていたので、飼い主である友人には「ディディエの前だと、あなたはトレーナーに見えない」と叱られる始末でした。そんなディディエでしたが、5ヵ月齢から訓練所に入れられ、とりあえずおりこうさんになりました。しかし、2歳になったころ「散歩中に吠えまくって、どうにも手に負えないくらい悪くなったので見てほしい」とのSOSが入りました。私はちょうど帰国したところでした。体も精神的にも成熟する2~3歳の時期に、困った行動が出るのは珍しいことではありません。

というわけで、友人とディディエ、そして親友ではなくドックトレーナーとしての私の戦いが始まりました。友人はもともと穏やかな性格でしたので、気の強い柴犬に振り回されることがないように、まずは愛犬との正しい関係を作るベースプログラムを実践してもらいました。

数週間経つと、友人とディディエのあいだにはしっかりとした関係ができつつあるように感じたので、具体的に吠えるのを止める作業に入ることにしました。

音に対して敏感だったディディエは、小さな缶(12回くらいの立方体)に10円玉を数枚入れてガシャン!と1回音を出しただけで、まったく吠えなくなりました。その後は、もっと小さな缶にコインを数枚入れただけのものでも反応してくれました。これは、ディディエの音に対する敏感さもありますが、今まで友人が感情に任せた中途半端な体罰を使ったり、大声で叱ったり、脅かすようなしつけをしてこなかっだからこその効果です。中途半端に脅かす手段を使っていたら、おそらくもっと打たれ強く(?)なっていたことでしょう。

実際、以前に見たことがあるミニチュアーダックスフンドは、毎日毎日、頑固なおじいちゃんとその息子であるお父さんの2人に怒鳴られて、鍋のふたをお玉でたたく音で脅かされ叱られていたのです。そのミニチュアーダックスフンドは、ゴミ箱として使っていたワックスの缶(20Lサイズ)にコインや鍵をたくさん入れて思いっきり振っでも、効き目がありませんでした。ご主人が鳴らしたときは一応ハウスに逃げ込むのですが、それでも吠え返し、奥さんが鳴らしたときは缶の底に噛みついてきました。鳴らす人によって反撃の仕方が違うのは、やはり犬と飼い主さんとの関係が影響していると思います。

その後、ベースプログラムとガウ缶を使ったレッスンでいい感じになってきたということで、ディディエに会いに行きました。ドアホンを押してみると、以前はエントランスまで聞こえてきたディディエの吠える声が聞こえません。ドアが開くとそこには「いらっしゃい」と余裕の笑みを浮かべながら友人が立っていました。玄関に入っでも、悲しいかな、大好きな毛玉くんは飛んでくる気配がありません。

そのままリビングヘ向かうと……、いました! ディディエは、自分用のクッションの上に丸まりながら、ちぎれるのではないかというくらい一生懸命しっぽを振っていました。動いてはいけないとわかっているようで、じっとこらえています。かわいい!こういう姿こそ、かわいいと思っちゃいます!

「ディディ、ダメだよよと、私の姿を見つけて動きそうになるディディエを制する友人。静かなトーンの声ですが、威厳を感じました。私はディディエをクシャクシャしたい衝動を必死で抑え、静かにソファに座りました。ディディエはクッションの上でしっぽを振りながらじっとしています。私もあまり派手な動きをしないように注意しながら、刺激しないように目をそらし、ひとしきり世間話をしてから、もうそろそろいいだろうということになりました。

友人が、「ヨシ!」と言って「マテ」の解除の合図をすると、うれしそうに、でも気を使いながら、ディディエはスルスルと私のそばに来てくれました。そしていつものようにじっくりとぺロぺロしてくれて、私であることを確認して満足していたように見えました。私も興奮させすぎないように、静かに彼のあいさつを受け入れるようにしました。

「今ではもう何の問題もないんだよ」と満足そうな友人の顔を見て、幸せな気分になりました。自分で言うのもなんですが、本当にいい仕事をさせてもらったなあ、と感じる瞬間です。

がんばっでくれた友人、そしてディディエに感謝しています。本当にありがとう!